おやこ美文字通信 

字を書くスピードと字の美しさは両立できるの?

速く書くと字が汚くなってしまうというお悩み

さて、先日のレッスンでのこと。

習い始めてすぐの方から、こんなご質問を受けました。

「速く書こうと思うと、字をきれいに書くことができないんです。」
「字を習っていても、すぐには速く上手に書けるようにはならないんですかね。」

また、お教室の保護者からも、

「学校のノートの字が汚いんです。急いで書くみたいなんですけど、雑で汚くて…。せっかく書道を習っているのにどうしてなんでしょうか。」

あなたはどう思いますか?
同じようなお悩みがありますか?

速くきれいに書くことができるようになるために

こんな風に、お教室の生徒さんや保護者の方からよく聞かれる質問の一つが、字を書くスピードと美しさの両立についてなのです。

それでは、『速く書くこと』と『きれいに整えて書くこと』

その2つは両立できるのでしょうか?

今回は、この答えのヒントとなる解決方法や解決となる視点を5つあげてみました。

① ペンの持ち方や姿勢を見直す。
② 字を書くスピードを上げるための練習を行う。
③ 行書を取り入れる。
④ ”速くきれいに書く” → ”速く書く時にはある程度の整った字を目指す”と考えてみる
⑤ 筆記用具や下敷を変えてみる。

これまでの指導経験に基づいた考えなのですが、少しでも参考にしていただけたら幸いです。

では、一つずつ具体的に説明していきたいと思います。

ペンの持ち方や姿勢を見直す

まず、最初に考えるのは、「持ち方や姿勢の見直し」です。
大人になると、持ち方や姿勢を意識する機会はほとんどないと思います。
そして、文字を書く機会自体も減っていますが、皆さまの持ち方はいかがでしょうか?
望ましいと言われる持ち方ができている方は、大人の方でも割合は少ないと感じています。

そして、一度習慣になった持ち方を改善することは根気のいることですし、文字を書くことができれば問題はないと思います。
ただ、たくさん書くと指に負担を感じたり、ペンだこができたり、どうしても字が綺麗にならない‥という方は、持ち方を改善することが近道かもしれません。

ペンを持つのに力は必要ありません。

指に力が入ってしまう場合は、指の位置や手首や腕の角度などを見直してみると、それだけで楽になる方もいらっしゃいます。
持ち方が整い、自然にスムーズな運筆ができると書くことに負担はなくなり、たくさん書いても疲れません。

また、座る際の姿勢は、腰骨を立てるようにして書くと良いです。正座の時に骨盤からスッと背中から頭まで伸びるようなイメージです。
覗き込むように背中が丸くなってしまう場合は、持ち方にも原因があります。
美しい文字を書くためにも速く文字を書くためにも、指がスムーズに動かせるように、持ち方や姿勢の見直しにまずは取り組んでみてください。

もし、おうちで一人でお子様に教えるのが難しいと感じたら、オンラインで一緒に学習できる場所もありますので、覗いてみてくださいね。

字を書くスピードを上げる練習ステップ

2つ目は「字を書くスピードを上げるための練習」についてです。

ペン字や硬筆の練習では、字形を整えて書くことができるようになってから、速さを徐々に上げる練習に取り組んで行くと良いでしょう。

1「お手本の見方を知る」
2「お手本通り、正しく整えて書くことができる」
3「お手本を見なくても、正しく整えて書くことができる」
4「スピードを上げてもある程度整えて書くことができるようになる」

この流れでスキルが上達していき、スピードを上げてもきれいな文字が書けるようになっていきます。

まずはお手本の細部を見て覚える、お手本の見方を知るということが最初のステップになります。
お手本から得られる情報(線の長さや方向、線の間の空間、全体の形、部分の大きさやバランスなど)をしっかり理解することが大切です。

次のステップでは、お手本通りに書くことを目指します。
お手本を見て理解したことを、手で書いてアウトプットしていきます。
スポーツと同じ、体を動かして身につける実技的な部分です。

この練習の中で、脳内で記憶した文字を書きながら身につけていくことで、お手本を見ないでもお手本のようにきれいに書くことができるようになります。

その次の段階が「速く書くこと」となっていきます。

硬筆書写検定の4級以上には、第1問に「速書き」の課題がありますが、制限時間内に決められた文字数を乱れない字で書くことは難しいことです。
速く書くためには、ある程度の継続した練習が必要だと言えます。

また、書写の勉強会である先生が、
「速く書く時と、丁寧にゆっくり書く時には書き方が少し違う」
というお話をされていました。

これも練習しながら、速く書く手の使い方や動かし方を試してみるとよいかと思います。

子ども達には、視て書き写す『視写』も書く力を伸ばします。時間を計りながら、何文字書けるか継続して記録してみるもの良いですね。

行書を取り入れて書く

3つ目は、「行書を取り入れて書く」ということです。

お子さんには難しいですが、大人の方には有効な手立てとなります。
楷書体で美しく書こうとすると、一画一画しっかりと書く必要があるので、どうしても書く速さには限界が出てきます。

そこをクリアできるのが行書体です。

滑らかに画をつなげたり、省略したりして書くことができるので、速く手を動かすことが可能です。

しかし難点は、継続した練習が必要な点です。
一定の法則があるので、そこを覚えていけば難しいということはありませんが、
それでもお手本なしに日常生活で書けるようになるためには、繰り返し練習する必要があります。

先ほどの硬筆書写検定でも、速書き課題では行書や草書を用いて書いていきます。

行書は速く書けますし、手も疲れにくいうえ、見た目も美しい実用的な書体です。ぜひ挑戦していただけたらと思います。

*詳しくは行書について過去に書いたブログ記事も参考にしてください。

速く書く時にはある程度のきれいな字を目指すようにする

これは根本的な解決ではないのですが、
「いつでもどんな時でも美文字でなくてはいけない」
という思い込みを変えてみるということです。

字を書く際にもTPOを考えて、場に応じた丁寧さ、きれいさ、そしてスピードを考えていくことも必要だと感じます。

大人の方はお仕事上、速くきれいに書くことを求められる場面もあるかと思いますが、もしそうでなければ、場に応じた字を使い分けてみてはいかがでしょうか。

これは子どもの例になりますが、以前教員だった頃に担任をしたSさんのエピソードです。

とても字のきれいなSさんはいつもノートが見やすく、書写で書く字もお手本のようでした。また、理科の自由研究や日記に書く字もとても丁寧で感心していました。
ただ几帳面で真面目なSさんは速く書くことができなくて、板書や作文を書くことに時間はかかっていましたが、特に困ることはありませんでした。

それは、クラスで社会科見学に行った時のことでした。

見学先でお話を聞いてメモをとらなければならないのですが、普段通り丁寧に書こうとするSさんはメモが間に合わず、話にもついていけません。

きれいに書くことは素晴らしいことなのですが、多少字が崩れても素速く書かなければならない時もあります。

求められるスピードとの兼ね合いで、100パーセント美文字を目指さなくてもよい場面でしたら、80パーセントなり70パーセントなりの美文字を目指すのも一つの考え方としてよいのではないでしょうか。

*Sさんのようなお子さんはよくいます。なので、あらかじめ子ども達には、
「今日は丁寧な字でなくてもいいから、後で見返したときに自分が読めるくらいの字で書いておこう。」と伝えると、子ども達は安心するようです。

美文字については、こちらの記事も参考にご覧ください。

筆記用具や下敷を変えてみる

使う用具によってもスピードに影響が出るでしょう。

紙、ペン先(穂先)、硬さ、柔らかさ…

筆記具の種類やメーカーによって全く違います。

あなたにとって、滑らかに走るように書ける、相性のよい筆記具を探してみるとよいでしょう。
今人気の万年筆にもたくさんの種類、たくさんの書き心地のものがあります。
軸の太さ、細さ、インクの違い、鉛筆なら芯の硬度など、比較しながらよりよいものに出会えるといいですね

下敷も丁寧に字を書くためには、筆圧のかけやすい「ソフト下敷」と呼ばれる「硬筆用下敷」を使いますが、速く書くためにはいわゆるプラスチック製の硬い下敷を使った方が書きやすいでしょう。

速く書き写すことが優先される場面では硬い下敷、
ゆっくり美しさを求める場面では柔らかい下敷‥

というように使い分けると良いです。

今は100円ショップでもソフト下敷を見かけるようになりました。
こちらは少し厚みがないという印象ですが、まずは手軽に購入できますので試してみると良いでしょう。

まとめ

「速く書く」というのは、実は思っているよりも難しいことです。

私自身は、普段着と晴れ着の違いのように、丁寧に美しさを求められる場面ではビシッと美文字を書ける、そして普段の生活の中では、ある程度整った字をサラッと書くことができる…

そんなあり方を目指しています。

そして最終的には、『速さ』と『美しさ』のほどよいバランスをとって書いていくのが一番よいかと思います。

少しでも参考になれば幸いです。

「もっと速く、もっときれいに」と焦る前に…
ご自宅で、親子それぞれのペースで成長できる環境があります。

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